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出窓は誘う

私より上の世代からはよく出窓のリクエストを受けます。特におくさま方には絶大な人気があるようです。お話しを伺っていると、出窓の魅力は、部屋が広く見えることとおしゃれな感じがすることの2点に集約できそうです。ここで云うおしゃれとは、どうもヨーロッパへの憧れに繋がっている感じです。


先日、依頼を受けた住宅のリノベーションを考えていてある事に気が付きました。


  出窓は防犯上弱い

 

ということです。
その住宅は20年ほど前に建てられたものでした。外観は白っぽい吹付け材で覆われ2階に小さなバルコニー。茶系のアルミサッシュや既製品の玄関ドアが20年前のフツーを醸し出しています。主要な窓には雨戸があり、小さな窓には防犯用の格子が外部に取り付けてありました。しかし、出窓にはなんの処置もありません。考えてみれば当然です。出窓には雨戸もシャッターも防犯用の格子も取り付けることはできないからです。

 

最近ではシャッター付きの出窓もありますが高価な上、外壁を壊さないと取り付けられないためリフォームには向いてません。あとはせいぜいガラス部分に格子が組み込まれた既製品を使うぐらいですが、防犯上優れてるとは云い難いものがあります。


昨今、防犯に対する関心がますます強くなるなかで出窓は逆風の時代を迎えつつあるのかもしれません。
しかしながら、実は、私たちも出窓はよく使います。ただし、既製品の台形型をした三面ガラスのよく見かけるタイプとは異なります。

出窓の正面、最も大きな面をガラスではなく、カガミや壁にし「見る」という機能を捨て去った出窓です。


通常、窓はいくつかの要素が組み合わされてひとつの窓として機能しています。
外を見る/内を覗く/出入りする/換気する/明かりを採る などです。
正面を目隠しした出窓は一見暗くて役に立ちそうにありませんが、換気と明かり採りに特化した場合には非常に理に適っています。それは住宅のなかでもとりわけプライバシーが求められる寝室や浴室廻りなどで有効です。

また敷地に余裕がなく隣家が迫る場合や北側などでも威力を発揮します。


目隠しした面は、寝室なら絵を飾ったりパソコンコーナーとして利用し、洗面室であれば写真のように全面カガミ貼りとして使うなどバリエーションは様々です。

換気や明かり採りは「見る」ものではありませんから目立つ必要はありません。それぞれ相応しい場所に設置することが、そのまま合理的で機能的な出窓になるというわけです。


また、面積の大きな箇所を壁としているので防犯上も優れています。トップライトやサイドの換気窓を人が入れないくらいに設定しても機能は充分満たされています。


窓は外を眺めるもの、あるいは、出窓は飾ったものを見てもらう場所。そんな概念を振り払った時、新しい窓のカタチが見えてくると思います。

Anecdote of Architecture

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