地下室は誰にとっても魅力的だと思いますが、お金がかかります。

しかも、倉庫や納戸ではなく、居住スペースとして使うには、光や換気も考慮しなくてはなりません。

一般的な解決策として、ドライエリアをつくる方法があります。

ドライエリアは地下室に隣接する中庭と思っていただければ結構です。

しかし、部屋でもないのに部屋と同様に、穴を掘り、土を捨て、コンクリート工事が必要です。つまり、さらなるコストアップに繋がります。

 

そこまでしてつくっておきながら、使い道はリビングでもなく寝室でもなく、サロン!

友人や彼らの知り合いと語らったり、海外からのショートステイを迎えたり、云ってみれば他人に開放するためのスペースなのです。

なぜ? なぜそんなことを?

場所を提供することにより、自分は知的な刺激を受ける。その発想、実にユニークかつ進歩的だと思いませんか。

3. 親杭/掘削

道ゆく人が立ちどまり、覗きこみ、驚きの声をあげ、去ってゆく。

 

写真左:親杭と呼ばれる鉄骨を地中に埋め込んでいるところ。

砂場でシャベルを使って穴を掘ると、周囲から砂がこぼれ、なかなか深い穴をつくることができませんよね。

掘りながら親杭と親杭のあいだに板を差し込み崩れ防止の壁をつくります。

 

写真右:掘削中。今回はドライエリアがあるので、ドライエリアの下に雨水を溜めるピットをつくります。ピットがないと大雨の時、地下室に水が入り込まないとも限りません。

一番深いところで地面から4.6メートルもあります。

4. 地下室の防水

地下室の最大の敵はやはり『水』でしょう。

せまい土地においては躯体防水しかできないこともあります。躯体防水とはコンクリートの密度を上げ、コンクリート自体の防水性能を高めることです。

論理は簡単です。施工も難しくありません。魔法の水をどろどろ状態のコンクリート(生コン)に混ぜるだけです。しかし、この魔法の水がベラボーに高いんです。もろもろ諸経費込みで、だいたい100万円ぐらいします。

今回も当初は魔法の水を入れるつもりでしたが見積り調整の段階で諦めました。

かわりにゴムアス系のシート防水を採用しています。通常はコンクリート打設後に防水工事を行いますが、打設前に型枠に防水しています。

5. コンクリート打設

木造のメインイベントが建前ならRC造はやはりコンクリート打ち(打設)でしょう。

しかし、木造の建前が工事開始から1ヶ月もかからないうちに行われるのに対し、時間もそれまでにかかわる職種も圧倒的に多いコンクリート打ちは、一発勝負の緊張感とともに、達成感も強いように感じられます。

それは、やり直しや後工事がきかない故の、事前の図面検討や現場チェックが木造の比ではないからでしょう。

アンドーさんではないけれど、コン打ちは戦いです。

6. 型枠をはずす

下職さんには驚かれ、現場監督や上役の職人さんには畏敬と呆気がないまぜになったような眼で見られ、腕が痛くなるほど型枠を叩き、しびれるような充実感が駈け抜ける。

実際、指揮官がいち兵卒として前線で戦うことは得策とは云い難いが、職人を鼓舞し、士気を高めるには効果があるし、なまった身体を酷使するのは快楽を呼び覚ましもする。

 

全力を尽くしたからこそ、型枠をはずす日は楽しみでもあり、恐ろしくもある。

 

静寂を破り、ひと筋の光が地下に差し込む。

コンクリートの表面は瑞々しく輝き、空間に息が吹き込まれた。

 

部屋が持っている力強さ/拡がり/ポテンシャル。生まれたばかりの無垢な状態は、すべてをさらけだし、私に問うてくる。

どうだ?正しかったか?

7. 鳶職人

家をつくるのは大工さん、というのが一般的な認識だとは思いますが、着工から2~3週間の間は、大工さんの登場はありません。

では、それまでは誰が工事を進めているのか?と云えば、鳶(とび)と呼ばれる職人さんになります。

 

建前以前の土工事、基礎工事、建方を鳶職人が、建前よりあとを大工さんが受け持ちます。

建前(たてまえ)は木造住宅の骨組みをいっきに建てる日ですが、その日は、鳶と大工が一緒に力を合わせ建ててゆくとともに、鳶から大工への引継ぎの日でもあるわけです。

 

鳶は字からも想像つくように、高い所で作業をするので、その名がついたと云われています。

江戸時代では町火消し人足も兼ね、町内各家の松飾りや祭礼の用意もしたとのことです。

鳶の長を頭(かしら)大工の長を棟梁と呼びますが、頭のなかには火消しの末裔らしく?気の荒い人や外見上ちょっと近づき難い雰囲気の人もいました。強面で剃り込み。ちょび髭の先端は尖ってるとか、パンチパーマにサングラスなど、街で会ったらゼッタイに眼を合わせられないと云った感じですが、話すと結構気さくで呑み込みも早く、部下からの信頼も厚い。こうゆう人がいると現場も締まり、いい仕事に繋がってゆきます。

もっとも最近では、良くも悪くもフツーな人が増え、この手の頭は絶滅危惧種なのかもしれませんが・・。

8. 地鎮祭/上棟式

地鎮祭は、工事をはじめる前に敷地の地主神を鎮め、工事の無事を祈願するために行う儀式です。神さまへのご挨拶ですから、神社の神主さんにお越しいただくことになります。

一方上棟式は、建前が終わり、家の骨格が出来上がったことを喜ぶとともに、大工さんや鳶さんへの感謝の印です。

どちらも工務店に段取りしてもらうことは可能ですが、特に上棟式は、施主(建て主)が工事に携わる人をもてなす催しですから、ちょっとおかしな話しになりますよね。

設計事務所は施主の代理者ですから、私たちが相談にのったり、用意することもあります。

 

気になる費用は、地鎮祭で3~4万円、上棟式は私の経験値で15~25万円ぐらいです。

結局は気持ちの問題なので、行わなくてもなんら問題はありません。

 

『Salonのある家』では地鎮祭、上棟式、どちらもクライアントのお二人が先頭に立って準備されました。

敷地から歩いて行ける距離に天祖神社があり、二人で出向いて神主さんにお願いしたそうです。バイタリティあります・・。

 

写真左:地鎮祭のお供物。鮮魚の鯛をご用意いただいたのは初めて見ました。気合いが入っています・笑

式典終了後、近くの小料理屋にて工務店の社長共々、昼食をご馳走になりました。もちろんメインはお供えした鯛です。

 

写真右:上棟式。クライアントのお二人が、料理から飲物まで手配され、家族の方の手作り料理まで並びました。餅米焼売という名の、焼売の具に餅米をまぶしたモノをいただきましたが、これが絶品でした(^_^) あまりに美味しかったので娘たちへのおみやげに戴いて帰ったほどです。

 

最近は職人の方々が車で移動するのが普通になり、せっかく上棟式を開いていただいても、呑めないのでカタチだけになり、折詰めと飲物をおみやげ用に用意するというのが一般的です。

おみやげとご祝儀を貰って早く帰りたい、というのがあからさまに見えてしまう上棟式も経験ましたが、嫌なものです・・。

 

今回は折詰め無し!その代わり所狭しと並んだご馳走に、酒屋から届けられた瓶ビールが次々空きます。お祝い用に並んだ一升瓶まで封を切り、みな饒舌になってゆきます。実に楽しい上棟式でした。

 

普通、工務店や設計事務所がお祝いに持ってゆく酒と云えば「松」や「寿」あるいは「鶴」などのめでたい名を冠した一升瓶ですが、日本酒よりワイン好きのクライアントに、私たちからはちょっと奮発して

Moët & Chandon Brut Imperialを贈りました。

9. トップライト

トップライトが好きです。

 

私たちが設計する住宅では、ほとんどの場合、トップライトがあります。

敷地めいいっぱいに建てる場合や天井の高い部屋などで、法的に、採光、換気、排煙に対し有利だという事情もありますが、豊かな自然光が降りそそぐ、というのに、憧れを感じているからかもしれません・・。

 

トップライトのいいところは、昼明るく夜暗いことです。外部の明るさに連動しているのですから当たり前ですが、時間というものを感じさせてくれます。季節や時間帯によって射しこむ光に変化があるのも楽しいことですね。

逆に短所は、ガラスの種類や設置する場所を考えないと、暑い!ということでしょうか・・。

南向きにつけることは滅多にありません。

見学にきていただいた方々やこの工事に携わった人々に、例外なく褒めていただいたのが和室です。

わずか4畳半。収納が迫り出しているので実質3畳半のこの和室は、私にとってとても良い経験になりました。なぜなら、ここまで拘ったというか、単なる畳ルームでない和室を設計する機会が滅多にないからです。

 

この和室は南・西・北と3方向に窓があるにもかかわらず、天気の良い日でも薄暗い印象です。

しかし、それこそがクライアントが求めていたものなのです。

 

4畳半というのは確かに狭い。でも息苦しさは感じません。むしろ落ち着けて、4~5人で車座に坐っていると「一杯やりますか」という気分になってきます(^_^;)

 

様々な要素が居心地の良い雰囲気を作り出しているのだと思いますし、ある程度は私にも説明ができます。しかし、言葉で表現するのは難しいですし、陳腐に陥りやすいのでやめておきます。

 

施工していただいた山洋木材の山本さんに「図面で見た時より(実物の方が)ずっといい」と云われたのは最高の褒め言葉だと思っています。

なにせ山洋木材は知る人ぞ知る、有名建築家御用達の工務店で、山本さんは百戦錬磨の強者なのですから。

11. 上げ下げ襖

クライアントとのコラボで生まれたカタチはいろいろありますが、和室の襖もそのひとつ。

和室に設ける半間の収納扉は、片引き戸か開き戸が一般的。しかし、プラン的に引戸はできません。となると必然、開き戸になるところですが、それだと布団の出し入れの際、不自由を感じるとの意見から写真のような上げ下げ方式に落ちつきました。

地下への階段との関係で、収納を床レベルまでつくることができなかったので、下から1/3は窓に利用し雪見障子としています。

12. 竹を選ぶ

見積り時点では、和室天井の竿縁(さおぶち,棹縁とも)は桜でした。

私のイメージは、皮つきの自然の風合いを残したモノ。しかし現場担当者にイタイところをつかれます。

「2.7メートルも、まっすぐな枝、ないっすよ。集成材でいいですか?」

「じゃぁ、曲がってる枝のままでいいよ」

「天井がでこぼこになりますよ」

「オーケイ。それでいい」

「無理っす!」

 

あれこれ悩んでいると、山本さんから、竿縁も竹にしてはどうか、との提案を受ける。

壁の腰部分で珪藻土と和紙を使い分け、その見切り材として竹の半割を使うつもりでいたので、私もその提案に飛びつく。

「では、竹を選びに行きましょう」

ということで、しばらく経ってから3人で竹屋さんへ。

 

もう、見事なまでの竹と竹細工のオンパレード。

文字通り、足の踏み場も無いような倉庫で竹を選んできました。

 

写真左下の黒い竹が竿縁に選んだ黒竹(くろちく)

竹に囲まれ、天井材も竹にしたい!と願い出ましたが、ものすごい手間だと云われ、断念しました。

13. 手かぎ

畳の下には床下収納があり、クライアントのお二人は、趣味の梅干しを貯蔵しています。スペースにはまだ充分な余裕があるので、長期保存のワインや使わないけど捨てれないモノなどを仕舞うのにいいかもしれません。

 

畳を持ち上げるのは結構たいへんです。半畳でも15~20キロほどあります。もちろん表面に取手など付いているわけもありませんから、手掛かりがありません。

そこで写真の「手かぎ」と呼ばれる道具が必要になります。引っ掛ける場所はどこでも良いというわけでなく、きちんとした場所に掛けないと畳が痛むと聞きました。

 

好奇心旺盛なクライアントは、畳屋さんから手かぎを購入し、早速手ほどきを受けていました。

「ソファは置かないつもりです。かわりにダイニングには10人くらい坐れるようにして下さい」

 

クライアントのお二人、決して、ソファのない生活をしていた訳ではないんです。でも、自分たちの生活スタイルを見つめ直し、ゆったりとダイニングでくつろぐ ことを選択されました。

 

「食卓が家の中心」という考え方は、ちゃぶ台時代から繋がる日本的なスタイルでもありますしね(^_^)

15. 製品検査

建築で云う製品検査というのは、サッシュや鉄骨製品など、工場で作られるモノが図面や打合せ通りできているか、わざわざ工場まで出向きチェックすることです。

ですから、やる気になれば、便器や外壁材などどんなモノでも可能ですが、通常、既製品は対象外。その建物のために特別に製作したものが対象となります。

しかしある時期、製品検査は「接待」を意味してました。

 

宮脇檀建築研究室に入所して2年目の夏。

はじめて受け持ったアパレルの店舗兼事務所ビル、総額7億円くらいの物件で、サッシュやトップライトの製品検査をしに大林組の所長と二人で立山に向かいました。しかし、我々を待っていたのは、温泉とコンパニオン。

 

いや、一応、工場には行ったんです。しかし社会科見学のような工場見学をするばかり。

「え?検査するサッシュは?」「あれ?工場間違えちゃったかナ」

私の驚きをよそに所長はうそぶいてくれます。

その後、ファスナーの工場見学までさせられて、ボタンの替わりにファスナー仕様になったYシャツをおみやげにいただき、夕方、まだ明るいうちに温泉に入っていました。

 

夕食は日本人のコンパニオン3名付き。

サッシュメーカーにとっては施工会社が請負先になるので、接待するのは大林組でいいのですが、施工会社としては、設計事務所が検査するという名目できていますから、大卒ほやほやの若造であろうと私を立てます。

上座に坐ると、黙ってコンパニオンが両脇に寄り添ってきました。

 

上座に坐る経験も、コンパニオン付きの夕食も初めてですが、「力学」というのを垣間見た気がしましたね。上座の力学。

 

夕食後はフィリピンパブ。今度は4~5人だったか?よく憶えてません。

翌日はトロッコ電車に乗って黒部渓谷。ほんと、なにやってんだか、、って感じです。

時代(とき)はバブル。社会人って、、、いろいろ考えちゃいましたね。

 

で、今回の『Salonのある家』では、鉄骨階段の製品検査に行ってきました。

行った甲斐があったというか、段板の取付位置に間違っている箇所があり、是正を指示。まぁ、間違いはあるものです。問題はそれを的確に対処できるか?見劣り無く修正できるか? です。

 

その他、キャットウォークの手摺やレンジフードの吊りパイプの打合せをして、そのまま現場に直行です。

朝いちに、工場の最寄り駅で待ち合わせし、現場を離れたのは夕方6時過ぎ。ハードな一日でした。

ちなみに今回の検査でいただいたものは、缶コーヒー1本のみです。

16. 鉄骨階段

鉄骨階段の利点は、木製階段では実現できないような造形と軽やかさ。

逆に欠点は、コストと重量です。

軽やかに見えても、素材の比重から、どうしても重くなってしまいます。

 

もうひとつ、鉄の特性から「揺れ」が問題になることもあります。

構造的には成立していても、揺れがひどく、不快に感じることがあります。

部材を細くし、軽量化と軽やかさを追求すると、その頻度は増しますが、実際、どれくらい揺れるかは、設置するまでわかりません。

 

毎日使う階段が揺れるのは困りもの。かと云って、いつも見えている階段が重苦しかったり不細工であるのも考えものです。

 

製品検査では、揺れがひどかった場合の対策も2段階にわけて打合せしてきました。

さて、設置当日。

段板を除いた重量が300キロほどあるこの鉄骨階段を、数人で運び入れ、引っ張り上げます。すべて人力(^_^;)

仮留めされた階段を恐る々々歩いてみます。揺れは感じません。つぎに複数で階段に上がり、揺すってみます。問題なさそうです。

水平垂直を出しながら、本締めしました。

キッチンでパソコンが使えるようにしたい。との要望を受け、いろいろ試行錯誤しました。当初はノート型を天板の下に入れ込み、天板の一部をガラスにすることを考えていましたが、結局はもっともシンプルなカタチに。坐って作業ができるように椅子の収納と、キーボードやマウスを仕舞う棚が用意されています。

アイランドキッチンを美しく保つためにダイニングから洗剤やスポンジが見えないよう シンク内の壁に窪みを作り専用スペースを用意しました。

使い易さと少々の遊び心でキッチンが少し曲がっています。

調理をしながらテラスの方を眺めたいとの要望を受けて考えたモノです。

長さが3.3mもあるので 曲げたことのより軽快になった気がします。

18. レンジフード

レンジフードはオリジナルでつくることもありますが、最近は性能に加えスタイリッシュなモノも増えてきて、既製品を利用することが多くなりました。

ただ、一般的に、壁面か天井面に設置するモノしかなく、今回のようにキッチン上部が吹抜になっている場合には使えません。

そこで、仮の天井というか、板をパイプで吊り下げ、そこにアリアフィーナのアイランドタイプを取付けました。

レンジフード自体はあくまで既製品なので、天井裏に隠れてしまう部分は化粧がされていません。フツーのダクトが丸見え状態です。

ステンレスで化粧カバーをつくり、レンジフードの一部を切り取ったり、部材をつけ足したりして合体させました。

「ほんとうに切っていいんですね!?」

職人さんや現場監督の言葉に、決定を出すのは、けっこうドキドキものです。なにせ20万円ぐらいしますからねぇ。。

 

一方、位置出しは、もっとも重要かつ難しい作業ですが、私は割と涼しい顔。

ガゲナウのIH、バーベキューグリル、ハイカロリーバナーと3連に並べたクックトップはXY軸から少し振れてる(曲がってる)ため、レンジフードも仮の天井も壁には斜めに取り付きます。

しかし私は、Macで求めた数値を指示するだけ。

「あと10ミリ右」「3ミリ手前」

レーザーと勘を頼りに必死に位置出しする二人には申し訳ありませんが、非情な声が響き 。

19. 洗面室

宮部みゆきの小説『いつも二人で』に、美人の幽霊に身体を乗っ取られ、挙げ句に女装させられ、女性の心理を垣間見る青年が出てきます。その彼は、女性たちはいつも自分自身をチェックしている という事実に気づきます。

化粧室のカガミの前はもちろんのこと、歩きながら、話しながら、挨拶を交わす間でさえ、自分を映し出すモノを見ずにはいられないらしいのです。

 

さて、

大きなカガミは気持ちいいものです。

部屋を広くも見せるし、明るくもする。自身をチェックするにも有利と云えるでしょう。問題があるとすれば、余計なモノまで映し込んでしまう可能性があることでしょうか・・。

計算して配置しているようでも、思わぬ角度から意外なモノが見えてしまうこともあります。

実は『Salonのある家』でも、あまり見たくないモノが映り込んでおりショックを受けました。次回への反省点ですね。

 

いつもは少し短めのカウンターでさえ強引に2ボールにする我が事務所ですが、今回は坐って化粧できるように専用のスペースを確保しました。

 

床材は浴室との繋がりを考慮し、どちらもクレママーフィル。やわらかさと上品さを兼ね備えた天然大理石です。

20. 浴室

キッチンとともに、クライアントが最後まで譲らなかったのが浴室、そしてジャクソンの浴槽です。

見積り調整中も減額の候補にすら上がらず、夢や希望が一心に注がれてました。

「ジャクソンをTOTOに変更するだけで50万円以上減額できますよ」

私の言葉はそよ風のように軽く受け流されます。

 

浴槽手前の階段1段分は、こどもの身体を洗う際や、ミストサウナを享受できるようにと設けました。

 

窓は比較的小さめですが、南面してるため浴室が乾燥し易く、なにより、入浴の際、やさしい風が気持ちいいと云っていただいたのが嬉しかったです。

21. 玄関収納

住宅に収納は不可欠ですが、とりわけ、玄関の収納が充実していると便利で機能的だと思います。

靴や傘は当然のこと、コートやマフラーなど寝室まで運ばなくてもよいモノもあります。

鍵や印鑑、筆記具などが置ける場所も欲しいとこです。

 

収納棚の奥行きは有効で40センチあればたいていのモノは納まります。靴の箱は30センチ程度です。ですが、ハンガーを使って服を掛ける場合には一般的に云って55センチ必要です。

ひとつの箱(クロゼット)の中で、上部にハンガー、下部に靴を収納しようとすると、靴の方の奥行きが余ることになります。当然、手前と奥の2段で置きたくなりますが、出し入れには不都合が生じます。

そこで、棚板が手前にスライドし、奥のモノも取りやすいように配慮しました。

 

逆に、靴の奥行きに合わせて箱をつくり、ハンガーの向きを90度変え、手前にひっぱり出す方法もあります。服の収納力は落ちますが、狭いスペースでは有効です。

22. 既製品キッチン

地下サロンのキッチンは既製品を使っています。

一般に、同じ長さのキッチンをつくる場合、既製品の方が安いと思われてる方が多いようですが、それは最低ランクの面材を使用した場合の話しです。

私たちは多くの場合、扉や側板に本物の木を使用しますが(と云っても無垢材ではなく、突き板ですが)メーカーに同程度のモノを求めたら、はるかに高くつきます。

また、ちょっとした変更やアイディアにも応えてくれません。

あくまでメーカーが決めた枠のなかで、つまり、面材や扉の開閉方法の変更といった類のモノに限られます。

 

既製品の良いところは、現物を確認できることとバラつきがなく安定していること。

売り場で見て、買ってきて、ぽんと置く。

建築の一部であるのに、まるで置き家具のような感覚です。

住宅って、建て主の夢や希望や憧れ、つまりは「思い」が詰まったウツワなのだと思います。一生に一度とまで云われる大事業ですから、ついつい詰め込み過ぎたり、金銭感覚がマヒすることもあるようです。そんな状況を整理し「思い」を具現化するのも私たちの役目だと思っています。

 

「思い」を実現するためにはお金がかかります。なかなか周囲(街)のことにまで関心がいかないのは理解できますが、木の1本、せめて下草でもよいのでどこかにグリーンを植えたいものです。

 

この家の道路に面した外壁には、アルミ製のルーバーが取り付いています。これは内部への視線をカットするのではなく、夜間、部屋のあかりを外部に漏らし、道行く人に和んでもらいたいと、建て主からの提案をカタチにしました。

バス停に日除けやベンチが欲しいように、ちょっとしたコトで街がプラスになってゆくといいですね。

ずっと住み続ける家は、ずっと住み続ける街でもあります。