板橋の家
密集地に建つ3世代のためのギリギリハウス。
容積・建坪・斜線なにもかもめい一杯。厳しい条件を糧に、安い材料にひと手間加え、表情を作り出しました。
設計、工事中に心がけたこと。
・素材を生かす
・手間をかける
・ハートで作る
モノづくりの基本はいつも同じです。
上/リビングダイニング。オープンな作りながら階段側とは3枚引戸で仕切ることが可能です。普段は本棚背面の壁に引き込まれていて、真夏や真冬のエアコン、床暖房使用時のみ使うことを想定しています。
下/右奥にあるキッチンの一部がリビングダイニングに突き出たような形状をしています。キッチンからもダイニングを経由せずに廊下側に出られ、回遊性を持たせてあります。
超密集地
トップライトと小窓で
光と風をコントロールする
通常、窓はいくつかの要素が組み合わさってひとつの窓として機能しています。
外を見る/内を覗く/出入りする/換気する/明かりを採るなどです。 しかし本来、それらは相容れないものなのかもしれません。換気や明かり採りは「見る」ものではありませんから目線にある必要はありません。逆に景色を眺める窓に換気機能を持たせるとデザイン的にすっきりしません。
明かり採りも通常の窓よりトップライトの方が効率が良いのは自明のことです。それぞれ相応しい場所に相応しい大きさの窓を設置する方が気持ちいいはずですが、窓の数が多くなればそれだけコストが掛かりますし、そこまで考えて計画されてないというのが現状ではないでしょうか。
この家の場合、密集地で、道路側以外に大きな窓を取ると、お隣さんの視線が気になるという状況でした。そこで必然、小窓やトップライトを多用することになったわけです。
その数、換気用小窓:19、トップライト11。
その結果、北側の階段室やトイレ、西側の洗面室でさえ昼間は照明を必要としませんし、どの部屋にいても風が流れてきます。
2階寝室 東, 南, 西, トップライトと4方向に窓があり、明るさと換気に充分配慮しています。そのうちのひとつはテラスに面し、直接出入りできます
洗面室。正面は全面カガミ貼り。左手奥に換気用の小窓、上部にトップライト。明るく清潔に保ちたいが大きなカガミも欲しい。そんな洗面室に求められる機能を出窓を応用し整理しています
気分は温泉
日本の伝統的な住宅には 陽と陰,表と裏の区別がありました。戦後もその影響を引きずっていて、ほと
んど使われない応接間が東南の角部屋にあるのに対し、キッチンや浴室が暗い北側に集まっている家で育った方もいるのではないでしょうか。
女性の社会的進出や発言が大きくなるにつれ、キッチンだけは表舞台に出てくるようになりましたが、浴室や洗面室などは相変わらずのように思えます。
私自身は風呂が大好きです。ゆっくりと湯に浸かるのはもちろん、気分転換に浴びたり、汗を流すだけのシャワーも苦になりません。そんな私ですからプランを考えていても、つい浴室を条件のよいところに持ってきてしまいます。
浴室は単に汚れを落とすところではなくリラックスする場所なのですから、建て主の方も、屋上に風呂がある、湯殿だけ離れになっている、あるいは浴室が家の中心にあるなど、もっと好き勝手な発想を相手にぶつけて構わないと思います。
余ったところに浴室や洗面所を置く、という発想ではなく、積極的に水廻りを考えて見てはどうでしょうか。