
うずまきな家
町田市の、のどかな住宅地に建つシングルが静かに暮らすための住宅です。近くには薬師池公園や 映画『となりのトトロ』にでてくる七国山があります。
この住宅の特徴はなんと云っても とんがった屋根と屋根の構造がむき出しになった天井。方形屋根の隅木をそれぞれ中心からずらすことにより、屋根面の勾配を4面とも違え「うずまき」を表現しています。
道路から連なる動線も 中華どんぶりの模様よろしく、直線ながら中心へと渦を巻いています。
屋根を支える垂木は48本。その長さはすべて異なり、ひとつとして同じモノはありません。
普通、屋根の大工工事は半日もあれば終わってしまいます。ところがこの家の場合、1ヶ月も掛かりました。大工さんは相当苦労しました。私たちも検討を重ねました。難しい屋根でしたが、みんなが楽しんでるようでもありました。
あたらしいカタチを作るって、そーゆーコトなんだと思います。
上/外観。 屋根材のガルバリウム鋼板は垂木と同じ方向に葺かれ、うずまきを演出。屋根頂部に意地のハイサイドライトを設けています。
下/基本設計時のコンセプト。この家の「核」は リビングでもキッチンでもなく書斎であるとの考えから、うずまきの中心に書斎を据えています。


2階書庫。
部屋の中央に丸柱がそびえ立ち屋根を支えています。天井の仕上材はシナベニヤ。壁は
珪藻土。床は木曽ヒノキの無垢材です。塗料も自然素材を使いナチュラルで落ち着いた雰囲気を目指しました。
床に設けたヒノキ材のスノコは、吹抜とともに空気を循環させる役目を果たしていますが、1,2階の距離感を縮め 一体感を持たせることも意図しています。

一般的に、高い天井は気持ち良く、家を建てるならできるだけ広い部屋・高い天井にしたいという方も多いと思います。しかし、ただ高いだけの天井は意外と落ち着かないものです。和室が落ち着くのは、その縦横のバランスがとれているからでしょう。
また、メリハリも大切だと考えています。
闇があるからこそ光を感じるのであって、均一に明るいだけでは作業場のようです。天井高も同じで、低い所と高い所があって、拡がり感が生まれそれぞれの良さを引き出せるのではないでしょうか。
この家のリビングダイニングは天井高が 2.2mしかありません。ですが 一部が吹抜となっているため、あまり低さを感じません。むしろ「落ち着く」との評をいただいてます。

上/ダイニングより階段方向を見る。
4枚建ての障子は両袖の壁に引き分けることができ、全面ガラスとすることも可能です。
障子とガラス面のわずかな間にブラインドを仕込みました。ブラインドを引き上げた時に、障子に影が映らないよう、ブラインドボックスを深くとっています。
障子のひとますが大きいつくりを荒間障子と呼びます。吉村順三、宮脇檀に愛されたカタチで、私たちも継承しています。
下/この家の空気の流れを表した図面。

