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ダイニングのあり方

現在広く使われているLDKといういい方は、元々は公団住宅の51-C型に由来します。食寝分離と就寝分離を図るために1951年に考案されたプランです。

それまでの集合住宅は食べるところと寝るところが一緒、親と子が同じ部屋で寝るのが普通だったのです。51-C型は台所と食べるところを一緒にしダイニングキッチンと呼び、頭文字からDKと名づけました。フローリングの床に椅子とテーブルを置くスタイルも51-C型からです。
フランク・ロイド・ライト(1867~1959) が好きだった教授からは、ダイニングは「ハレ」の空間。気分が高揚するように天井は高く、逆にリビングは落ち着きを求め壁を背にし暗めの照明低い天井が理想と習いました。この場合、あくまで相対的に低い高いと云ってるわけで、ライトの住宅ですからリビングの低い天井といっても3mぐらいはあります。人間の生理学に基づく古典的な考え方ですが、現在の主流はむしろ逆の場合が多い気がします。明るく開放的で天井の高いリビングとコンパクトなダイニング。
ちゃぶ台から始まった日本のダイニング形式がより西欧化しているとも云えますが、ダイニングは食事をするためだけの場所ではなく、団欒や会話の中心となる場所でもあります。新聞を広げ、子供の宿題をみ、パソコンでネットサーフィンをする。それらが可能なぐらいの少し大きめのダイニングテーブルが私は好きです。
私たちの設計した『愛犬と暮らす家』ではダイニングの上部が吹抜けになっています。そのため天井高は6mもあります。この場合問題となるのは照明器具のことです。通常のようにペンダント照明を吊すと見た目はカッコイイですが地震などで揺れた場合なかなか停まらないばかりでなく破損などの危険すらあります。そうかといって、パブリックスペースのような高天井用の高照度のダウンライトも蝋燭やフロアスタンドだけというのも住宅では無理があります。そこで考えたのがワイヤーを使った吊り下げ型照明器具の選択でした。弱電の流れた2本のワイヤーを2階の床レベルに水平に張り、そこに照明器具を引っかけるだけの単純なシステム。ワイヤーは固定ですが照明器具は自由に動かせ高さ調整も容易です。ドイツのインゴ・マウラーを使いましたが、現在は日本のメーカーからも似たシステムが出ています。

それにしても、と思うことがあります。
どうしてダイニングテーブルと椅子は揃いでなければならないのでしょう。中にはソファまで統一している家も見かけます。これだけ「個性」だ「自由」だと云われる時代にすべてのダイニングチェアが揃ってなくともいい気がします。家族といえどもそれぞれ体格や趣味は違うのですから各自が好きな椅子を選び自分の椅子に坐る。私にはその方がより自然な気がしますし、その家の個性に花を添えると思いますがいかがでしょうか・・。

Anecdote of Architecture

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