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ドアはどっち側に開くか

私が在籍していた宮脇檀建築研究室では、玄関ドアは内開きを基本としていました。「いらっしゃいませ」と客を迎え入れるためとの理由でしたが、毎日使う家人にとってもいいはず。安全ですしやはり気持ちがいいものです。高級ホテルやレストラン、フラッグシップショップなどでドアマンが扉を引いてくれることを考えてもわかります。


集合住宅では法的な規制により内開きとするのは困難ですが、日本の場合、戸建て住宅でもおそらく99%以上が外開きなのではないでしょうか。 なぜでしょう?
主な理由は2つあります。


ひとつは玄関スペースに余裕がないこと。

欧米のように室内でも靴を履いた生活ではあまり玄関を広くする必要はありません。ですが日本では靴脱ぎスペースが必要な上、他の部屋に追いやられあまり広く取れないのが実情です。


もうひとつは技術的に外開きの方が簡単であることです。
雨仕舞い(あまじまい=水の侵入を防ぐこと)や隙間風を考えた場合、外開きの方が遙かに楽なのです。しかし、ひょっとすると、誰もが外開きに慣れっこになってしまい、あまりに普通過ぎて疑問にすら思わないのが最大の理由かもしれません。


一方、部屋内ではどうでしょうか。
廊下に面した寝室やトイレのドアが急に開き、ぶつかりそうになったり怪我をした経験はありませんか。やはり部屋側に開くのが安全だと思います。
さらに寝室の場合ベッドと反対側に開けるのがより良いとされています。僅かにドアが開いた時、ベッドにいる人が外からの視線を直接感じないことが心理的に重要なのです。


狭いというただ一点の理由のために外開きにするのであれば、私は引戸を勧めます。

スペースを取らないばかりでなくリビングなど出入りの多い箇所では開けたままにしておいてもスマートです。
また、引戸は2枚3枚と平行して使うことが可能です。一枚は通常の扉として使い、もう一枚を鏡貼りにしたり網戸にするのです。

毎日は使わないけどあると便利なものを壁から引き出して使うわけです。


引戸の欠点は気密性の低いことですが室内であれば解決は案外楽です。問題は玄関に使った場合でしょう。細心の注意と経験が必要です。

Anecdote of Architecture

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