高気密高断熱の落とし穴

夏をもって旨とすべし


兼好法師(1283~1350)が書いたこの有名な一節は日本の住宅の基本とされてきました。冷蔵庫もエアコンもない時代、冬の寒さより高温多湿の夏に重きを置いていたことがわかります。

テレビの時代劇でお馴染みの武家屋敷などでは人が入れるほど床下が高く軒の出は深くつくってあります。

部屋は縁側の奥に作られ建具は可能な限り開け放つことができるようになっています。

夏をもって旨とすべしを要約すれば、日射を遮り風を通す。ということだと思います。


現代は設備や材料の発展により650年前とは比べようもないほどに快適な住宅をつくることができます。

それでも30年前の住宅には断熱材が無く隙間風とともに冬の寒さを克服することに主眼が移っていったように感じます。10年ほど前まではガラスはシングル、断熱材はグラスウールが一般的でしたが1998年ぐらいから急速にレベルアップし、高気密高断熱という言葉も普通に使われるようになってきました。


高気密高断熱住宅の特徴は家全体を断熱材で覆い外気の流通を防ぐことです。そのため、ガラス窓は小さく数も少なめです。

セントラルヒーティングで家中どこにいても暖かく快適ですが、一方で弊害も出ています。


圧倒的に換気量が少なくカビや化学物質が室内に留まっていることです。

窓を開けても面積が小さく、また大抵は腰より上に設置されているため窓下や床面の換気が思うようにできません。苦肉の策として24時間換気の義務づけという法律ができましたが、常時換気していたのではむかしの隙間風と同じ。

実際には誰も使用していません。


住宅のカビといえば冬の結露によるものが一般的でしたが、断熱材の利いた開口部の少ない住宅では、むしろ梅雨時期の方が危険です。

やはり兼好法師の時代と変わらぬ足下から大量に風を呼び込むことが大切だと思います。


そしてもうひとつの弊害は乾燥です。
日本の冬はもともと乾燥していますが、冬場の暖房が、石油ストーブ→エアコン→床暖房と進化するに伴い室内の乾燥がより深刻化しています。ペアガラスになり窓面の結露が減ったこともこの場合には不利に作用しています。


高気密高断熱・床暖房・ペアガラス、どれも推奨したい要因ですが、それらが重なり合った時思わぬ結果をもたらしているのです。

乾燥収縮により建具は反り木枠は暴れます。壁紙のジョイントに亀裂が走り構造材は割れやすくなります。人は喉の渇きを訴え皮膚が痒くなることすらあります。
最近は加湿機能付きのエアコンも出ていますがエアコン自体あまり気持ちのいい暖房器具とは云えず、できれば床暖房+加湿器としたいところです。

 

 

 

 

Anecdote of Architecture