酸っぱい蕎麦つゆのゆくえ
保険屋のオッシーはテレビっ子だ。その彼がほとんどテレビを見ないわたしに次のようなメールを書いてきた。
「テレビは現代の最大の文化ですからね。江戸時代の歌舞伎みたいなもんです。この時代に生きた証としてテレビはいっぱい見たほうがいいですよ」
ある意味、正論だと思う。時折つけるテレビから貴重な情報や役に立つ知識を得ることは、確かにある。先日も朝の番組で思いもよらぬいいことを聞いた。
焼き茄子をつくる際、割り箸で先端からヘタの方へ向けて穴を開けておくと、余分な水分を飛ばすことが出来、早く上手に仕上がるというのだ。
焼き茄子はわたしの大のつく好物。暑くなりはじめたこの時期から秋口まで何度となく食卓に登場する。生姜とかつを節をのせ醤油を垂らした焼き茄子はさっぱりしていて滋味深く、それこそ何本でも食べられる気がする。
しかし、茄子は本来あぶらとの相性がよい。オリーブオイルたっぷりの茄子入りペペロンチーノやラタトゥイユ、麻婆茄子や茄子の天ぷら。どれもあぶら多めが旨い。
時々BBQで見かける茄子の半切りはパサパサでかわいそうな気さえする。
なかでもお勧めは茄子の素揚げをだしつゆに浸したもの。皮をピーラーで剥き輪切りにして素揚げする。きつね色に色付いたら、醤油+味醂+酢、それにだしを混ぜ合わせたつゆのなかで充分泳がす。鶏ももの唐揚げを一緒に浸せばなお美味しい。だしが無ければ水でもよい。
・・・って、そんなことをしなくても我が家にはとっておきのだしがあることに気がついた。
味醂と酢を間違えてつくってしまった蕎麦つゆがあるではないか!
使い道がなく冷蔵庫の奥底に沈んでいたが、ようやく陽の目を見る時期がきた。
余談だが、茄子の皮を剥く際は事前にしばらく水に浸けておくとよい。また、茄子の代わりに蓮根の素揚げでもよい。この時は揚げる前に蓮根を麺棒かすりこぎで叩いておくとだしつゆが染み込みやすくいい具合である。
ともかく、酸っぱい蕎麦つゆが報われたような気がして茄子に感謝なのである。