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紀伊國屋本店仮店舗コインパークにて

本格的な夏がきて連日30度を超す暑さが続く頃、気になるのは薄着による体型のことではない。ワインのことだ。
去年の6月  Ch.Figeac 1994 を呑んでわたしは焦った。壊れていたからだ。
我が家にも人並みにワインのストックがある。が、ワインセラーはない。もちろんカーブなぞあろうはずもない。

数年前、実家に小さな地下室ができてからはその一角に放り込んでいるが、それまではほんとうにその辺に転がっていたものだ。Figeacもそうした経緯を辿ってきた一本だ。


こうなると心配なのは残っている他のワインたちだ。特筆すべきようなワインはほとんど無いが、なかにはCh.LafiteRothschildの1996年物なども含まれていて気が気でない。確かめるには開栓するしかないが全てのワインを開けるわけにもいかない。そこで地下室ができる以前からの物とできてからの物を一本ずつ選び試すことにした。

せっかくだから友人何人かを呼びアトリエで一緒に試飲してもらうことに。暑い時期だったが料理は牛テールの赤ワイン煮とした。もちろん入れるワインは先日のCh.Figeac 1994の残り。


さて、昨今のBSE問題の影響か牛テールを探すのにひと苦労した。京王小田急高島屋西武ピーコックどこも置いてない。伊勢丹にはあったがオージーだった。前日に東急東横で最後の2つを手に入れたができれば人数分欲しい。

当日の朝、紀伊国屋に電話を掛けると「ある」と云う。早速買いに出かけた。

11:38 コインパーク入庫
12:08 買い物終了。コインパークへ戻る

すると出口が大渋滞。すでに6~7台が並んでいた。しかも様子がへんだ。先頭の兄ちゃんに訊くと精算機が故障とのこと。


「たまんないっすよ。かれこれ30分っすよ」


ルーズな服に身を包んだ関西弁の兄ちゃんは、でも、気は良さそうだった。牛テールが傷むといけないと思い、普段はしないがアイドリングストップは無視することにした。

しかし、暑いからといって車のなかにいる気にはなれない。管理会社の到着まであと30~40分かかるらしい・・。


しばらく何人かと話をしたりして様子見をしていた。その間にも買い物帰りの人が次々やってきては唖然としている。荷物を車に置くとまた出ていってしまう人も何人かいた。なにも知らずに入庫してくる車もいる。
その時、パッと閃いた。
入口から出ればいいんじゃない!

一番前の2台と協力して入口のセンサーに手をかざす。
発券ボタンのカバーが開く。
ボタンを押す。
発券される。
抜き取る!
バーがあがる!!
わたしがバーを押さえ、後ろを振り向く。
行列して待っているみんなが一斉にうなずく。
ランドローバーのおやじが叫ぶ。

「それでいこう!」

1台通過する度、バーは降りようとするが支え切れないほどではない。十数台の手助けをし、先頭の兄ちゃんが最後にバーを通過したところでかわってもらった。


アトリエに戻ると丁度12:48だった。
テールの味より、ワインの香りより、駐車場の一件を鮮明に憶えている。

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